「内容」
「幽霊出現などの怪異現象を種や仕掛けによって人為的に作り出す娯楽」である妖怪手品。時代とともに大がかりな見世物になっていく江戸享保年間から明治までを描き、同時代の各国との比較や江戸川乱歩との接点も紹介して、怪異を楽しむ日本人の感性に迫る。
ってことで今回はちょっと風変わりな手品の本を。
さて、こちらの本、れっきとしたまじめな本です。学術書とまではいかないかもしれませんが、ほぼそちら側の本です。
で、「妖怪手品」なる言葉の定義ですが、
「幽霊出現などの怪異現象を、種や仕掛けによって人為的に作り出す娯楽」
という意味で本著では使われています。
私自身、この本は以前から知ってたんですが、どうしても後回しになってたんですよねえ。
まあ、慌てることもないか、とおもってたんですが、いつの間にか店頭で見なくなってたので、「やっちまったかなあ」と思ってたんですが、昨年ある博物館の催し物に行ったときに見つけたので購入しました。
その催し物がこちら
昨年の秋に国立民族学博物館でやってた展示
見世物大博覧会
こいつを見に行ったときに見つけたのがこの本。
これはもう、このタイミングで買っとくしかないな、と。
この展示会自体も面白かったですよ。
今では無くなった見世物小屋とかが解説があったり。
あの呼び込みも流派というか系譜があるみたいですよ。
ストデアがエジプシャンホールで演じた「スフィンクス」、マジックが趣味なら皆さんご存知ですよね。
子供向けの本にも昔はマジックの歴史の一部として載ってましたから。
でもあの原理を使って、「たこ娘」なる見世物があったなんて知りませんでしたよ。
そのほかにも、アメリカにも同じような見世物小屋みたいなものがあったそうですよ。
いわゆるサーカス団みたいなものと一緒にまわる「サイドショー」って呼ばれるものが該当するそうです。
って話が本からそれましたね。
で、この本は前書きで
「さんげ袋」という書物の中には
「座敷へ天狗をよぶ事」
という術が開設されていること
「杯席玉手妻」にはろくろ首の呼び方が載ってるそうですよ。
この本はまさにこれらの本から、江戸時代の歌舞伎や明治の天一、天勝のことまで触れています。
さらには江戸川乱歩の所蔵書物のことまで
各章の終わりには参考文献がのっており、その中には我々でもよく知る方の本も挙がっています。
当然、「放下筌」のことも触れていますし、
もちろん欧米の状況についても触れていますよ。
当然のことながら、レジナルドスコットの「THE DISCOVERIE OF WITCHCRAFT」についても触れています
この本の面白いところは、これまでこれらの書物は「カードなどの現代へのつながりが分かりやすいものがメインで触れられていましたが、この本ではそういう視点では触れられていないので、なおさら興味深いです。
「月世界旅行」の映画監督ジョルジジュ・メリエスがマジシャンだったなんて知りませんでしたよ。
とにかくこれまで聞いたことのある書物も、違う切り口で書かれておりますので、ぜひ一度読んでみるのも面白いと思います。
おそらくネットであればまだ購入できるかと思います。